介護難民 官と民の役割をどうする
介護保険制度は、介護を必要としている人たちに、必要な介護を受けられるようにすることが目的です。しかし、現実は介護保険の運用や計画の不備によるものなのか、資金繰りに問題が出たため、施設による介護を改め、在宅介護を推奨するようになった。
その顕著な例が、医療型療養病床の診療報酬改定により、自宅療養できる環境にないのに療養病床病院から退院を余儀なくされ、行き場を失う事例が増えています。
また、民間の介護機関では介護保険を食い物にし、介護にかかわる介護士などに厳しい労働を強いて、かつ、介護を必要としている方に十分な介護を与えないという最悪なケースも出てきています。
官も民も、介護保険の本来の目的に立ち返り、介護が必要な人たちに親身になって活動することを望んでやまない。
(2007年7月17日 琉球新報)
「介護難民」とは実に嫌な響きのこもった言葉である。
長年社会に尽くしてきた高齢者が制度の不備や無策、社会の無理解などによってぞんざいに扱われる。安心して暮らせる余生について顧みられることなく、無残にも打ち捨てられようとしている。そんなやるせなさが語感に張り付いている。背筋が寒くなる思いだ。
厚生労働省から指定処分打ち切りを受けた訪問介護コムスンの事業所が廃止された場合、少なくとも全国54市町村で影響を受ける可能性のあることが共同通信社のアンケートで分かった。「見通し不明」と答えた県も多く、介護難民はさらに膨らむ予想というから深刻だ。
山間地などの不採算事業所や深夜まで対応しているのが、訪問介護を全国展開しているコムスンの売りである。こうした事業は代替不可能とした回答が目立った。
心配なのは、現在のコムスンの利用者が漏れなく譲渡先に引き継がれるかどうか不明な点だ。
親会社のグッドウィル・グループは譲渡先を選定しているが、作業は難航している。譲渡先が見つかったとしても、果たして山間地などの不採算地域を例外なくカバーしてくれるだろうか。深夜の訪問介護を引き受けてくれるのかどうか。不安はぬぐえない。
厚労省は譲渡に際し「利用者に適切なサービスが行われることが絶対条件」との姿勢だ。当然ではあるが、収益性を重視するのがビジネスや経済の論理である。高い収益が見込める都市部に買収希望が集中し、それ以外の地域は敬遠されることが起こり得る。
コムスンの問題は、一民間事業所の退場では片付けられない。利用者を安心させる受け皿づくりを整えるのは行政の責任だ。
昨年7月の医療型療養病床の診療報酬改定で療養病床病院から退院を余儀なくされ、自宅療養できる環境にもなく、行き場を失う事例が県内でも増えている。
介護をめぐる官と民の役割分担や機能補完の仕組みはどうあるべきか。そんな視点からの議論も欠かせない。
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