介護保険制度

介護保険制度

介護保険制度は社会の高齢化に対応し、日本で2000年度から介護保険法により設けられた社会保険制度のことです。

法附則の規定に基づく制度全般の見直し時期を迎え、2006年4月から新たなシステムなどがスタートしました。改革の目玉の1つは介護予防を重視したシステムへの転換にあります。

この背景には、介護費の増加に伴い費用の圧迫から、介護が必要にならないように、また、軽度の支援で済むように自立支援に切り替えました。

予防プランやリハビリによる、要介護状態の軽減、悪化防止を目的とした『新予防給付』と、市町村が予防メニューを実施する『地域支援事業』の2本立て構成になっています。



介護保険の保険料について

要介護状態にある人が介護サービスを利用する際、その費用を被保険者から徴収する保険料だけでなく、国・都道府県・市町村が負担する特徴を持ちます。
 
現行の制度では、サービス利用者の利用料負担は1割。介護保険サービスの財源は、65歳以上の第1号被保険者と40~64歳の第2号被保険者が50%、残りの50%を国(25%)と都道府県(12.5%)、市区町村(12.5%)で負担しています。
 
●第1号被保険者(65歳以上の者)

保険料の設定に当たっては、本人と同一世帯員の所得による所得段階に応じた定額保険料とすることにより、低所得者の方々にとっても過重な負担とならないような仕組みとしています。
また、市町村における保険財政の安定を図る観点から、3年程度の中期的な見通しに基づく設定とし、その徴収は、老齢・退職年金(平成18年10月より障害・遺族年金も対象)から特別徴収(いわゆる天引き)を行うほか、特別徴収が困難な者については市町村が個別に徴収を行います。
国が定めるガイドラインに基づき、保険者(介護保険の運営主体である市区町村)が介護保険事業計画を策定し、市区町村の条例で設定します。


●第2号被保険者(40歳から64歳までの医療保険被保険者)

それぞれ加入する医療保険のルールに基づいて、設定します。この介護保険料は、医療保険者が一般の医療保険料と一括して徴収を行います。



要介護認定と介護サービス給付

介護サービスの利用に先立って利用者が介護を要する状態であることを公的に認定(要介護認定)される必要があります。
これは、医療機関を受診した時点で要医療状態であるかどうかを医師が判定できる健康保険制度と対照的であります。 

要介護度審査は、保険者(調査員)が行う認定調査の結果と主治医の作成する意見書をもとに保険者(市町村および特別区、広域連合、一部事務組合)が運営する認定審査会によって行われます。
 
認定審査会では、認定ソフトの1次判定結果(上記認定調査の結果)と主治医意見書とに基づき、2次判定を行い、最終的に「要支援」、「要介護1」~「要介護5」の6段階に分けられます(「非該当」を含めれば7段階)。

保険者は、この審査結果を元に申請者に介護度を認定すします。なお、2006年(平成18年度)の介護保険制度改正で、「要介護1」の一部が「要支援2」に付け替えられ、従来の「要支援」は「要支援1」へと変更されました。これら要支援・要介護度を元に、どのような居宅介護サービスを組み合わせて利用するかコーディネイトするのが介護支援専門員(ケアマネージャー)であります。(要支援1・2は市区町村運営の地域包括支援センターがコーディネートします)
 
また、医療サービスの種類及び量を医師が決定する健康保険制度と異なり、要介護認定の結果により、定められた支給限度額の範囲内で、利用者が希望するサービスを組み合わせて利用できるところに特徴があります。

要介護認定を受けた被保険者が都道府県指定の介護サービス事業者からサービスを受けたとき、その費用の原則9割が支給されます。

施設サービスや、居宅サービスのうちあらかじめサービスを受ける旨を市町村に届けているものについての給付費は、介護サービス事業者へ直接支給されます。(現物給付)。

住宅改修や、福祉用具の購入など、保険者(市町村)への支給申請により、利用者が費用を負担したものに対し、後で給付費が現金で支給される償還払いの制度もあります。
 
施行前は要介護者の増大や社会的入院が大きな問題となっており、在宅介護(居宅介護)を推進するため制度が発足しました。かつては介護サービスがあっても、サービス量の絶対的不足から利用者に応じたサービス提供は難しく、自宅介護は困難なことが多くありました。現在でも、さしあたり「預けられる」入所介護施設の整備が課題の一つであります。
 



民間の介護保険

国が行う公的介護保険と区別し、介護費用保険と呼ぶ場合が多いです。
生命保険会社が取り扱う介護保険もあり、終身保険・養老保険など貯蓄型の生命保険を、保険料の支払終了時や満期時に介護保険に切り替える事ができる制度を定めています。

なお、医療保険と同様に、支払った保険料の多くは営業費用などに用いられるため、多くの場合「支払保険料<受取保険金」となります。



今後の介護療養型医療施設の扱い

2005年12月21日、厚生労働省は医療保険が適用される療養病床と機能が似ており、給付費の無駄(介護保険が適用される他の入所施設と比べると、配置される医師や看護師の数が多いため、保険から支払われる報酬が高い)を生む医療や看護をほとんど必要としない入所者が約半数を占めている現実があると言ってます。


 
その理由により、介護と医療の両方を必要とする高齢の要介護者に対して施設サービス計画に基づいて療養上の管理・介護等の世話、機能訓練等の必要な医療を行なう介護療養型医療施設(全国に14万床ある)について2011年度末で廃止する(介護型療養病床を現在の13万床から0床になる)方針を明らかにしました。
なお、廃止する既存の施設については、助成措置を設けるなどして他の介護施設などへの転換を促すとしています。
 
一方、医療型療養病床(医療保険適用の療養病床)についても介護施設などへの転換を促して現在の25万床から2011年には15万床に削減する方針であり、医療の必要性に応じて診療報酬に差をつけることなどを検討しています。
 
厚生労働省は2006年4月の介護報酬改定で、医師・看護師が現行基準より少ない施設を認めるなどして、各施設が老人保健施設や、医師の配置が義務づけられていない有料老人ホームなどへ徐々に転換できるようにします。

2012年度以降は、介護保険が適用される入所施設は特別養護老人ホームと老人保健施設の2類型となります。
 
しかしこれらの方針については、利用者負担が出来なければ家庭に返すという施策であり、老老看護で介護地獄の悲劇を増やす可能性がある、との批判があります。
 
 



介護保険制度における施設サービス

介護保険制度に基づく施設は以下の通りです。
・特別養護老人ホーム
・介護老人福祉施設
・介護老人保健施設
・介護療養型医療施設

それぞれの利用基準は次のようになります。

 
●特別養護老人ホーム
法的根拠は老人福祉法です。介護老人福祉施設と同様でありますが、やむを得ない事情がある場合は利用されます。

●介護老人福祉施設
常時介護を必要とし、かつ居宅でこれを受けるのが困難な場合に利用されます。医療行為は行われません。

●介護老人保健施設
病状安定期であり、入院治療をする必要はないがリハビリテーション、看護、介護が必要な場合に利用します。

●介護療養型医療施設
病状が安定している長期療養患者でカテーテルなど常時医学的な管理が必要なものが利用します。療養病床に該当するものは除外します。