福祉サービス向上のため「第三者評価」の普及を望む

社会福祉事業の経営者には、福祉サービス事業の自己評価は努力義務を定められていますが、第三者による評価を受けることは法律上の義務とはなってません。

多くの事業者は献身的にサービスの向上に努めていると信じたいが、介護者による精神的、肉体的虐待が報道される中、やはり第三者による評価の普及を促進し、安心して高齢者が介護が受けられるような社会になってほしいものです。

 

2007年5月27日(日)東奥日報)

  障害者、児童、高齢者の各施設や保育所などの福祉サービス事業者を外部の目で評価する事業の浸透度が、いまひとつだ。

 県福祉サービス第三者評価推進委員会の調査によると、「第三者評価事業」について県内の福祉施設の約四割が実施する予定がない、と答えている。

 アンケートに答えた施設の割合が、対象施設の約半数にすぎなかったことを考慮に入れると実際には、その割合はもっと多いのかもしれない。

 社会福祉法では、社会福祉事業の経営者は自ら提供する福祉サービスの質の評価を行い、良質なサービスの提供に努めなければならないと定めている。

 自己評価について努力義務を規定しているわけだが、第三者の評価を受けることは、法律上の義務ではない。

 しかし、福祉サービスを向上させていくことは、利用者や住民の信頼をかちえるためにも大切なことだ。そのためにも、二〇〇五年度に始まった第三者評価事業は有効といえる。福祉サービス提供者の格付けや順位付けを意図したものではない。実施の普及を望みたい。

 推進委員会のアンケートは、県内の福祉施設千七百一カ所を対象に実施した。回答したのは48%にあたる八百二十四カ所だった。

 第三者評価を既に実施したと回答したのは9%の七十一カ所あったが、ほかの評価制度と混同している可能性が高い。県内に評価機関は八つあるが、そこでの実績は二十三カ所だからだ。

 「評価の実施予定がある」「実施を検討中」を合わせると50%、「予定なし」は38%にも上った。

 予定がない理由では、「現状の法人(施設)では体制が未整備」とするのが多く22%、「義務でないから」13%、「利点が分からない」9%などとなっている。

 推進委員会が作成した資料によると、第三者評価の基準は、三分野、十一分類、二十五項目から成り立っている。

 例えば、「適切な福祉サービスの実施」についてだと、サービスが利用者本位のものになっているのかが問われる。また、質の確保がどのように図られているかも重要だ。

 施設の組織の運営・管理にも目が注がれる。人材確保のために職員が仕事に意欲を持てる環境づくりが適切に行われているかどうかも、判断材料になる。

 施設は孤立して存在しているわけではないので、地域との交流、連携も大事な要素になる。地域全体の福祉向上のための取り組みを行っているかも評価項目に入っている。

 実際に評価を受けた施設は、職員により提供サービスの内容に差があることを見つけることができた-と、評価の有効性を指摘している。さらに、職員の意識向上にもつながると歓迎する声もある。

 第三者評価の基本的な視点は利用者にとって必要なサービスが、適切な手続きを踏まえて提供されているか-にある。経営内容や労務管理、施設整備状況などの評価ではない。こうした点への理解が深まっていないことが数字に表れたともいえる。もっと趣旨のPRが必要だ。

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